疣贅(ウイルスによるイボ)

イボのことを疣贅(ゆうぜい)と言いますが、疣にも贅にも「あまりもの」という意味があります。一般的には皮膚から盛り上がった小さな出来物(腫瘍)をイボと称しますが、このイボには色々なものが含まれています。大きくは、ウイルスが関係したものと、老化現象としてみられてウイルスが関係しない老人性イボ(これにも複数の疾患が含まれます)に分けられます。ここではウイルスによるイボのうち、いわゆる「水イボ」(ウイルスの種類が異なります)とは異なるものについて説明します。
イボはヒト乳頭腫ウイルスによる感染症です。手足や顔、外陰部などできる部位によって特徴があり、それぞれに病名がついていますし、ヒト乳頭腫ウイルスにもたくさんの種類があり、同じ部位にできたイボでも症状に違いが出ることもあります。

1)イボの種類:イボはヒト乳頭腫ウイルスによる感染症です。イボの細胞にはウイルスが含まれていて、触っただけではうつりませんが、擦り傷や引っかき傷などの浅い傷に付着するとうつります。そのため軽微な外傷を受けやすい手足に好発したり、引っかき傷に沿ってイボが並んでいたりします。ウイルスに感染してからイボとしてはっきり目に見えるようになるには数ヶ月はかかると言われています。手足や顔、外陰部などできる部位によって特徴があり、それぞれに病名がついていますし、ヒト乳頭腫ウイルスにもたくさんの種類があり、同じ部位にできたイボでも症状に違いが出ることもあります。
A.普通のイボ(尋常性疣贅):HPV2・4,ミルメシアではHPV1
大豆粒くらいの大きさまでの半球状に隆起し、小さいものは表面がつるつるしていますが、大きくなるに従い表面がざらつき硬くなります。全身どこでも見られますが、手の甲、足背、指、膝に好発します。指先では、いわゆる「ささくれ・さかむけ」に一致してできることも少なくなく、爪の下に入り込み爪を破壊することもあります。足の裏に出来た場合にはいつも踏みつけられているために皮膚表面から盛り上がりません。魚の目によく似て歩行時に痛みが出ることがあります。しかし、削ってゆくと点状の出血点がみられるので区別できます。
B.男性のアゴなどにできる糸状・花蕾状のイボ(糸状疣贅)
先のとがった細長い突起がネズミの手のように飛び出したイボで、花蕾状に根元がくびれているのもあります。成人男性の顎ひげの部分や頚部によくみられます。髭剃りには電気カミソリを使い、すべりをよくするプレシェービングローションなどを併用して少しでも細かい傷ができるのを防ぐ必要があります。
C.若い女性に多い顔に多発する小さなイボ(青年性扁平疣贅):HPV3・10・41
若年女性の顔や手の甲に好発し、米粒大の大きさで、皮膚とほとんど同じ色かやや光沢を有し、皮膚面からわずかに盛り上がり、表面は滑らかです。顔に小さなものが多発することが多く、引っかき傷や剃り傷に沿ってイボが線状に並んで認められることもあります。従って顔剃りは控えたほうがよいでしょう。普通、自覚症状はありませんが、強いかゆみが出て、イボがやや赤みを帯びて、水っぽく盛り上がってくることがあります。これは自分の免疫反応による治る前兆で、数週間で皮がむけるように、すべてのイボがいっせいに脱落することがあります。
D.外陰部にできるイボ(尖圭コンジローム):HPV6・11
皮膚と粘膜の移行部などの湿ったところにできるイボは、増大して表面が顆粒状で柔らかく、集まって鶏のとさか状あるいは房状になることがあります。男性では陰茎や亀頭部、女性では膣や陰唇粘膜、男女の肛門周囲にみられます。性行為によって感染することが多く、パートナーにも注意が必要です。

2)ウイルス性のイボと間違えやすい病気
A.魚の目・たこ:イボの場合は表面がややがさがさしていて、削ると赤黒い小さな出血点が見られます。
B.汗管腫:顔面の扁平疣贅と間違われることがありますが、目の周りによくできる米粒大の皮膚と同色の小さな隆起で30歳以降に好発する皮膚真皮の汗管の細胞が腫瘍化(良性腫瘍)したものです。
C.アクロコルドン・スキンタッグ・軟性線維腫:まぶた、首、胸、ワキなどにみられる皮膚が小さくとび出したり、小さな干しぶどうのような外観を呈するイボで、茶色くなっていることもあります。これらは一種の加齢に伴う変化であり、ウイルスによるイボではありません。(治療は切除、電気焼灼、液体窒素などです。お問い合わせください。)

3)自然経過・がんとの関係など
感染後の潜伏期は1ヶ月から12ヶ月と幅があり、平均2~3ヶ月とされています。約半年で25%のヒトが自然治癒しているという報告もあります。プラセボ効果や暗示にて30から35%程度の治癒率が見込めると言われています。このことから、日本各地にあるイボ取り地蔵(塩地蔵など)や民間療法、暗示(特に小児)なども精神的なものによって免疫が高まるので治療の一助になるかも知れません。近年、ヒト乳頭腫ウイルスが発がんに関係しているのではないか?と言われていますが、子宮頚癌や高率に皮膚癌が発生する疣贅状表皮発育異常症で検出されるウイルスは通常のイボで検出されるウイルスとはタイプが異なりますので、イボががんになる心配はありません。

4)治療:いずれの治療においても1回で完治することは少なく、複数回かかりますので根気よく治療を続けてください。
A.内服薬:日本ではヨクイニンが用いられます。有効率は高くはありませんが、副作用も少なく試してみてよいでしょう。
B.外用・その他:侵襲の少ないものから試していってください。足の裏や爪の下のイボは難治性です。
① 角質溶解・剥離剤:尿素、サリチル酸、ビタミンD3などがあり、他の治療法と併用されたりします。
② 液体窒素凍結療法:-200℃近い液体を患部に綿球などを用いて押し当て、壊死を起こさせます。日本での治療の主体となっており、1~2週間で繰り返してゆきます。多少の痛みを伴います。
MCAやTCA塗布:1週間間隔で薬液を患部に塗布。痛みは比較的軽度。
グルタールアルデヒド塗布:連日患部に薬液を外用します。痛みはほとんどありませんが、茶色く着色します。
免疫療法(SADBEなど):強いかぶれを患部に起こさせます。感作成立後1~2週間間隔で繰り返します。
ブレオマイシン局注:抗がん剤を局所に注射しますが、かなりの痛みを伴います。難治性のものに試行します。
切除・電気焼灼・炭酸ガスレーザー:局所麻酔を行ったうえで施行します。難治性のものに試行します。
⑧ その他:ポドフィリン、カンタリジン、5-FU密封、PDT(光線力学療法)、Imiqimod外用などが報告されています。

5)当院での治療の基本:内服可能な方にはヨクイニンを内服して頂き、下記治療を併用いたします。
A.糸状疣贅:液体窒素凍結療法。比較的少ない回数で脱落します。
B.扁平疣贅:弱い電気(中周波)で焼灼してゆきます。基本的に無麻酔ですが、痛みに弱い方には表面麻酔使用。
C.その他:表面を軽く削った後にMCAやTCAを塗布し、その後液体窒素凍結療法を行います。そして角質溶解・剥離剤を外用していただきます。数回は繰り返し、改善傾向がないようでしたらその他の治療へ移ります。

*痛みなどで上記治療が継続困難な場合はお申し出下さい。一緒に他の治療法を考えてみましょう。特に手足のイボや爪の下のイボでは治療が長期に及びますし、痛みも強く感じてしまう部位ですが、頑張って継続して下さい。
余談ですが、東京で有名なイボ取り地蔵は新宿と西新井にあります。お地蔵さんにかかっている塩をもらってきて患部に塗布し、もし治ったら倍の塩をお地蔵さんにかけるというものです。